第26章 月と太陽
グイグイと渡されてしまった時の困っていたであろう更紗の表情や行動を思い浮かべ、贈り物をどうするかはさて置き杏寿郎は笑みを零した。
「謝る必要などない。まず間違いなく元隠か元剣士だろう!強引に渡せば君が断れないと知っている人物に違いない。顔は見えなかったか?」
「はい。深く帽子を被っておられましたし、お声も贈り物を受け取る際は一言も発しませんで……あれよあれよという間にこれが私の腕の中にありました」
かねてからお館様から謝礼を受け取りに来て欲しいと言われていたが、2人は謝礼など必要ございませんと返事をしていた。
ただでさえ鬼殺隊で世話になっていたのに、謝礼など身に余るものは更紗も杏寿郎も受け取れなかったからだ。
何度かそんなやり取りをしてここ最近はそう言った沙汰もなくなり、身を引いてくれたのだと安心していた矢先の現在である。
「よもや送られてくるとは思いもしなかったな!それに祝言の衣装まで…… 更紗は鬼殺隊の誰かと衣装の話をしていたのか?」
杏寿郎の問いに考える間もなく、項垂れていた更紗の背筋がピンと伸びた。
「はい!鈴村さんにどんな衣装を着るか決めているの?とお手紙で聞かれましたので、こんな感じですよーって絵に描いて送った記憶があります!」