第26章 月と太陽
身を縮こませる更紗を杏寿郎が恵比寿顔で愛でていると、襖が少し開きその僅かな隙間から蜜璃の可愛らしい大きな瞳が覗いた。
「どうした?甘露寺!中に入らんのか?」
いっこうに入ってくる気配のない蜜璃に声を掛けると、物凄く言いにくそうに小さな声で返事が返ってきた。
「あのぉ……今日はこのお部屋で待機じゃないですよ?もう皆揃ってて、お館様の到着を待っているんです」
「え?!そうなのですか?!てっきりこのお部屋で待機かと思っていました……私たち、何か案内のようなものを見落としたのでしょうか?」
2人は立ち上がりながら首を傾げ考えるも、やはり思い当たる事がないので謎は2人では解けそうにない。
「玄関で案内されなかったかしら?私の時はお館様の妹さんが案内してくれたのだけど」
「なるほど!俺たちは早く到着し過ぎて入れ違いになってしまったのだな!よもやよもやだ!更紗急ぐぞ!甘露寺、案内してくれると助かる!」
「「はい!」」
更紗の焦った返事と蜜璃の元気な返事に杏寿郎は笑顔を浮かべ、蜜璃を先頭に既に皆が待機している部屋へと急いだ。
まさか最後の柱合会議で待機する場所を間違えるとは……と更紗が少し項垂れていたことは誰も知らない。