第26章 月と太陽
「終わりますね、鬼殺隊」
「あぁ、そうだな。何度も誓い合った通り、俺たちの代で終わらせることが出来て嬉しく思う。まだ実感が湧かないがな」
杏寿郎自身、数年間鬼殺隊に所属しその内の数年間を柱として後輩たちを導き、強い鬼を何体も相手取ってきた。
人を救いながら後輩を導くことは容易ではなかったはずである。
「杏寿郎君は……柱の方々はすごいと思います。私では計り知れない苦労や悲しみが……あったはずなのに、私たちのような後輩を導いてくださっていたのですから」
杏寿郎に助け出されてから2年弱経過している。
あの日から杏寿郎は自身の苦労を一片たりとも更紗に見せることはなかった。
いつも真っ直ぐ前を向き、更紗が悩んだり悲しんだ時は支え導き続けてくれていた。
自分の中でも苦悩や葛藤があったはずなのに……だ。
「俺たちも鬼殺隊に入った当初は柱に助けられていたからな!先人にしていただいた事を後輩に還元していただけだ!それに更紗は鍛錬や戦闘において負けん気が強かったので育てやすかったぞ!その負けん気で冷や冷やさせられたことも幾度となくあったがな!」
なんとも耳の痛い話である。
更紗の師範が杏寿郎でなければ、途中で音を上げられていたかもしれない。