第25章 決戦と喪失
蛸が茹で上がったように顔が真っ赤になる更紗に皆が笑い、杏寿郎は……もう癖になっているのか胸元に隠そうと腕を広げたが、それは天元に止められた。
「いや、今日くらいもういいだろ……俺ら縁切るつもり毛頭ないから心配すんな!そんな当たり前のことより姫さんの願い教えてくれ!派手に気になるところで姫さん寝ちまったから、気になって仕方ねぇんだ!煉獄も全然教えてくれやしねぇし……ほれ、言ってみろ」
モジモジと体を捩らせ上目遣いで杏寿郎を見つめると笑顔で頷いてくれたので、更紗は意を決したように深呼吸を零し口を開いた。
「私、実は任務先の街で……」
部屋内の皆が一瞬キョトンとした後、なんとも生暖かい笑顔と空気が流れた。
更紗からすれば最大限の願いでワガママなのだが、どうやら皆からすればそうではないようである。
「えっと……本当にそれだけでいいの?柱全員一人一人に一発芸をしてほしいとか、自分では買えないものを買って欲しいとか……そんなのじゃなくていいの?」
無一郎のとんでもない例え……特に一発芸に柱全員が目を見開き冷や汗を流して更紗へと再度向き直り、どうか当初の希望で押し通してくれと必死の形相で訴えている。