第25章 決戦と喪失
「心做しか傷跡も薄くなってる……と言っていたと胡蝶から聞いた」
「あ!確かにそう仰られたように思います!では……私が無意識にご本人の許可も得ず傷を治してしまった……と言う事ですよね。無意識とは言え勝手に……」
謝罪しようとしたがそれを杏寿郎が更紗の唇に人差し指を置いて止めさせ、戸惑い見上げてくる赫い瞳を小芭内と行冥に向けるよう視線で促した。
「違うのだ。私たちは謝罪して欲しいのではない……月神、君の髪はこんなに綺麗な色だったのだな。煉獄が綺麗だの愛らしいだの言う理由がやっと理解出来た」
壊れ物を扱うようにそっと行冥の手が更紗の頭を滑り、初めはキョトンとしていた更紗は何が起こったのか理解し口元に両手を当てて涙を浮かべる。
「悲鳴嶼様……目が見えるようになられたのですか?」
「あぁ、月神の体が追い出していた力が私の目や額の傷、伊黒や不死川の傷跡を傷とみなし、ずっと治してくれていたのだ。皆、闘いが始まる前より体の調子が良くなった」
信じられないような奇跡に思わず自分の頬を力一杯つねってみるも、やはり痛みがはっきりと感じ取れ夢ではないと実感させられるだけに終わった。