第25章 決戦と喪失
杏寿郎の言葉なんて何のその……柔く抱きすくめていたのも災いして杏寿郎の体はペイと横へ流されてしまう。
「姫さん……良かった!眠り姫なっちまったから心配してたんだぞ!」
「てめぇ、あんまこいつに引っ付くなァ!煉獄いんだろォが!体調良くなったのかァ?」
「ねぇ更紗ちゃん、痛いところとかない?俺、助けてもらったから何か出来ることあったら言ってね」
「それよりお腹空いてない?!ずっと寝ちゃってたんだもん!私、ホットケーキとかならすぐ作れるよ!」
言葉もそうだが四方八方から体に手が伸びてきて、上手く現状を把握出来ていない更紗は人形のようにされるがままとなっている。
そこへ杏寿郎が戻ってきて、笑顔のまま人形のように固まる更紗を今度はギュッと抱き寄せた。
「固まってしまったぞ!ちょっと落ち着いてくれ!…… 更紗、皆は君が目を覚まさないものだから、心配で蝶屋敷に寝泊まりしていたんだ。俺と同じように君が転がり落ちた音に引き寄せられてここに足を運んでくれたものと思われる」
驚きで呼吸も止まっていたのか、更紗は杏寿郎の顔を見て思い出したように大きく息を吐き出した。