第25章 決戦と喪失
「は……い。はい!花火にお祭り、初詣、全てが楽しみです!」
よほど印象的で魅力的なものだったのだろう。生死の境を彷徨っていた更紗を今世に引き留めた要因の1つである杏寿郎が口にした催しに、涙で濡れた瞳を幸せそうに細め提案者の緩みきった顔を見上げた。
「あぁ!必ず全て赴こう!だがその前に君の願いを叶えるのと祝言を挙げるのが先だな!願いに関して、皆が気になって仕方ない様子だったぞ?言ってる途中で更紗が眠りに入ってしまったからな!俺の口から言うより君から直接」
バタバタバタッ
と杏寿郎の声を遮って何かが部屋になだれ込んで来た。
身構えていなかった2人は体をビクつかせ音の鳴った方……部屋の入口に視線を送ると、蝶屋敷で家事全般を勝手に役割分担して居座っていた者たち全員が目を見開きながら勢ぞろいしていた。
「ひ、姫さん……おい!姫さんが目ぇ覚ましてんぞ!」
夜中にも関わらず騒がしい音と共に天元を先頭として大人数が更紗に突撃してくる姿が目に入り、杏寿郎は慌てて更紗を抱き上げてベッドに座らせ、庇うように抱きすくめた。
「待て待て!更紗は病み上がりで体が言うことを聞かん状態だ!そんな勢いで迫られてはまた眠ってしまうぞ?」