第4章 鍛錬と最終選別
更紗の口から呼吸を使った技を放つ時に出る特有の音が聞こえ、杏寿郎が先程発動する際にとった姿勢を取っているからだ。
「炎の呼吸 壱ノ型 不知火」
同じ呼吸の同じ技名を凛とした声で発すると、まるで舞うかのように滑らかに、そして素早く鬼と間合いを詰め頸を切り落とした。
「よもやよもやだ……凄まじい天賦の才だな」
技を見事発動した更紗は、何が起こったのか自分で理解する事が出来ず、肩で息をして刀と塵と化していく鬼を交互に見ている。
「聞きたいことは山ほどあるが、今はこの子を家に返してやらなければならない。歩けるか?」
杏寿郎は子供を抱き抱えながら更紗に問いかける。
「あの、はい。大丈夫です……」
心ここに在らずのような起伏のない返事だが、弁当箱を包んでいた風呂敷で子供の腕を手当てしだしたので、ひとまずは問題ないだろうと判断して家の外へ出て行った。
子供の拙い説明で時間はかかったものの、両親の元へ送り届ける事に成功し無事に任務は完了した。
しかし、子供の家のあった村の外に出ると、更紗は腰が抜けたように道にへたり混んでしまった。
「杏寿郎さん、すみません。腰が抜けました」