第25章 決戦と喪失
扉がゆっくりと開き、月明かりだけが差し込む薄暗さでも誰が入ってきたのかすぐに分かった。
太陽のような柔らかな髪、炎のように力強くも優しい色をふんだんにたたえた赫い瞳。
どれほど自分が眠っていたかは分からないが、えらく懐かしく感じ涙がポロポロと零れ落ちてきた。
「杏寿郎君!」
動きの鈍い腕を必死に伸ばし求めると、杏寿郎は走り寄ってきてしっかりと体を抱き締めてくれた。
「更紗!やっと目を覚ましてくれた……1ヶ月も眠りについていたんだぞ。宇髄なんか君のことを眠り姫だと言うくらいだったんだ」
「1ヶ月?!……ご心配をおかけして申し訳ございませんでした。あの……それもなのですが……私、治癒出来なくなってるんです……自分の傷はおろか、誰の傷も癒すことが……」
胸元が更紗の涙で濡れるのを感じながら、杏寿郎は温かな体をギュッと抱きしめ直す。
「知っている。胡蝶が君の検査をしてくれた時に聞いていた…… 更紗は治癒の力も自己修復力もなくし、普通の女子になったのだと。辛いか?」
物心ついた時から共に歩んできた力だ。
あの力が原因で辛い思いも沢山してきたが、更紗にとってそれ以上に誰かを救えることが何より嬉しかった。
誰かの命を救うために闘う人の力になれることが、鬼殺隊に入ってからの生き甲斐となっていたのだ。