第25章 決戦と喪失
杏寿郎たちが部屋を追い立てられて数刻たった頃、長い長い眠りについていた更紗の瞼がゆっくりと開かれていった。
まだ夢現なのか焦点は合っておらず、ぼんやりと天井を眺めている。
「ここは……どこでしょうか?あれ……確か鬼舞辻を倒して……でも炭治郎さんが取り憑かれてしまって……でもそれも追い払えて……今は夜?……?!鬼は?!本当にいなくなったのですか?!」
一気に記憶が蘇り慌てて起き上がるも、上手く体を支えられず激しい音を立ててベッドから転がり落ちてしまった。
「痛っ……え?体が重い……節々も思うように動きません。嘘っ?!」
落ちた際に出来た痣を治そうと手を翳してみるが、今まで簡単に出せていた粒子が全くもって……一滴たりとも出てきやしない。
「そんな……もし鬼舞辻を倒したのが夢だったら……私、ただの役立たずになっちゃう。治癒が出来ない私なんて……どうして」
自分の手をどんなに眺めても現実は変わることなく、大きな喪失感が更紗をどんどん蝕んでいった。
どうしようと呆然としていると、早足で……それでいて静かに廊下を誰かが歩いてくる音がする。
それが部屋の前で止まったので、誰だろうかと開くであろう扉をみつめた。