第25章 決戦と喪失
そう言葉を紡ぐ実弥の声がとても優しく、杏寿郎の無条件に受け入れてくれる温かさも相俟って、更紗の心の中の悲しい気持ちが徐々におさまってきた。
「1つでも……棗姉ちゃんの願いを叶えられたなら……瀕死になったのも悪くないなって思えます……」
「……ふむ、俺は生きた心地がしなかったが。だが良かったな、桐島少女もあの男性も……鬼がいなくなりようやく安らかに眠れる。君が襲われる心配がなくなったのだからな。ほら、落ち着いたのならば少し休みなさい。目が覚めたら穏やかな毎日を過ごそう」
親が子供をあやすように背を一定の間隔を保ってポンポンと手で叩いてやると、今まで命を繋げるために必死に抗ってきた疲れを思い出したのか、ウトウトと船を漕ぎ出した。
「……皆さん、鬼舞辻を倒してくださって……生きていて下さって……ありがとうございます。目が覚めたら全員で……」
続きが気になるところで意識を手放してしまった。
先の言葉を知っている杏寿郎以外、なんとももどかしい気持ちにさせられたが、長い鬼狩りの歴史が幕を閉じ、最後まで人を救い続けてくれた少女が命を繋ぎ止めたことに喜んだ。
「俺たちこそ更紗に感謝している。ありがとう、命を賭けて多くの命を助けてくれて」