第25章 決戦と喪失

2人に会ったということは生死の境を彷徨ったということであって、杏寿郎や棗たちの事情を知る者たちは冷や汗をかいた。
それでもどういう訳か泣く元気を取り戻した更紗に安堵し、杏寿郎は輸血の続く弱った体を強く抱き締め直した。

「そうか。君のことが心配で桐島少女たちが背中を押しに出てきてくれたのだろう。嬉しいのも悲しいのも全て大切な更紗の感情だ、体力が続くならば泣いて構わない」

泣き続ける更紗に苦笑いを零しながら実弥はしゃがみこみ、戦闘やらで乱れてしまっている髪を撫でた。

「墓場まで持っていかなきゃなんねぇって思ってたが……棗はちゃんと自分の最期の願いを叶えに来たんだなァ」

杏寿郎の肩口で目を瞑り涙を流していた更紗は、真っ赤に充血させた目を実弥へ向け小さな小さな声でその意味を問いた。

「最期の願い……？棗姉ちゃん、何か言ってたのですか？」

「あぁ、お前の落ち込み具合いが酷かったから言ってなかった。棗はな、息を引き取る直前……最期に更紗に一目会いたかったって言ってた。お前がさっきみたいに苦しむ姿は見たくなかっただろうが、そのお陰で自分の最期の最期の願いを叶えられたんだァ……お前が叶えてやったんだって俺は思う」