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月夜の軌跡【鬼滅の刃】

第25章 決戦と喪失


圭太の声だけでなく周りの音が遠のく。
励ましてくれているのだろうと何となく分かるが、圭太の声は膜で覆われたようにくぐもってしか聞こえない。

そんな中、霞む視界に大切で失いたくなくて……それでも救えなかった2人の姿が明瞭に現れた。

(棗姉ちゃんと貴方は……迎えに来ちゃったのですか?)

棗と更紗をあの屋敷で助けてくれた男性が悲しそうに眉をひそめながら、かがみ込んで更紗の頬を撫でてくれる。
2人に触れたくて手を伸ばすも実体がないのか、すり抜けてしまって触れることが叶わなかった。

(助けられなくてごめんなさい……失いたくなかったのに間に合わなくて……いつも一足遅くて助けられない。ごめんなさい……もっと一緒にいたかったのに……あ、でも……もう一緒にいられるのかな?お二人の側にいられる?)

『駄目だよ。まだこっちに来ないで。やりたい事、沢山あるんでしょ?炎柱様の許嫁!』

ポンと頭を優しく叩かれたように感じた。
棗に視線を動かすと、涙を流しながらも笑顔を向けてくれている。

『俺の願いは貴女が穏やかに幸せに暮らすこと。傍らに居られなくても、その願いは変わりません』

どうしてこんなに優しい人たちが命を落とさなければならなかったのか。
人の幸せを心から願える尊い人たちの命がなぜ踏み付けにされなくてはいけなかったのかと思えば思うほど、更紗の胸に激しい痛みをもたらした。
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