第25章 決戦と喪失
「竈門も月神と一緒で皆から大切に想われてんだな。日輪刀を向けるんじゃなくて、今は全員が体を押さえて話し掛けてる。あ、今、あの子……栗花落だっけ?なんかの薬を竈門に突き刺したっぽい。何の薬か知ってるか?」
「うん……たぶん、人間に戻すためのお薬……かと。炭治郎さんも……皆さんも怪我してないですか?私にはもう治せないけど……」
こんな時まで人の心配かと圭太は眉を下げるが、出会った時から変わらぬ更紗の本質に少し胸の中が温かくなった。
「怪我人は……いないよ。大丈夫、皆怪我なんてしてない。月神の心配には及ばない」
圭太の優しい嘘は更紗を心底安心させていた。
本当のところ、禰豆子の体は炭治郎の牙や爪で深く傷付き、カナヲの体も炭治郎の爪で深く傷付いている。
カナヲに関しては更紗の力で覆われているので徐々に傷が癒えているが、禰豆子はそうもいかない。
しかし本当の事を伝えれば更紗は心を痛め、無理をしてでも禰豆子を癒そうとするだろうから……本当のことは言えなかったのだ。
「良かった……もう制御出来ないし……絞りカスしか今の私には残ってないから……はぁ……少し疲れちゃった」