第25章 決戦と喪失
震える力さえ残っていないはずの体を小さく震わせ、止まっていた涙も頬を伝い始めた。
それでも杏寿郎の言葉に小さく頷き、信じて待つと意思を示した。
「いい子だ。すぐに戻る……石清水少年、この子をしばらく頼む。返事がなくても話しかけ続けてやってくれると助かる」
更紗の頭を優しく撫でてから踵を返した杏寿郎に頷くと、圭太は更紗の隣りに腰を下ろしチラと顔を覗き込む。
先ほどまで杏寿郎と話し生気が満ちていた顔は、恐怖や焦燥に覆われてしまっていた。
「月神……見えにくいと思うけど、今一人の女の子がお兄ちゃんって言って竈門に抱き着きに行ったよ。髪の長い麻の葉模様の着物着た可愛い子……俺は知らないけど、竈門の妹か?」
再びこの場に激しい戦闘音が戻り更紗の心を痛めていたが、圭太の言葉に僅かであるが瞳に光が戻った。
「禰豆子さん……元に戻ったんだ。人間に……」
「人間に?よく分からないけど、間違いなく人間の女の子だよ。あの子もだけど、柱の人たちや継子たち全員が竈門に話し掛けてる。戻すために頑張ってくれてるよ。不死川さんだけ本気で殴ってるように見えるけど……」
目が霞みその様子を更紗には確認出来ないが、実弥が炭治郎を殴る姿が頭の中に浮かび少し笑みを浮かべる。