第25章 決戦と喪失
「……ーーっ!俺が笑えば君は安心して逝ってしまうだろう?!笑えない……俺たちが生き残って更紗だけいなくなるなど誰も望んでいないんだ。頑張ってくれ……」
笑顔にしたいのに杏寿郎は笑ってくれない。
それどころか悲しみを増長させたようで涙も止まらなくなってしまった。
笑顔にするには更紗自身が元気になるしか道はない……しかし今も尚何かを失いつつある状況下で、どうすれば元気になれるのか分からない。
(手……どうにか動かさないと。涙……拭って差し上げないと)
まずは手に意識を集中させた。
その感覚が初めて赫刀を発現させる時と少し似ており、懐かしさに頬が緩む。
(あ、動きそうです。よかった……頬に触れられる)
まるで重りをつけられているように重い腕を上にあげ、涙で濡れる杏寿郎の頬にそっと手を当てがった。
涙も頬も何もかも温かく、意識せずとも更紗の顔が自然と綻んだ。
(あとは声……声の出し方なんて考えたこともなかった……喉にも意識を……)
更紗が何をしようとしているのか察した杏寿郎は、頬に当てられた冷たい手に自分の手を重ね合わせ、頑張れと言うように背に回していた手を頭に移動させてゆっくりと撫でる。