第25章 決戦と喪失
暗闇から瞼越しに光が差し込む。
重い瞼をどうにかゆっくりと持ち上げると、涙で濡れた温かな赫い瞳が目に映った。
(杏寿郎君……泣いてる。涙を拭いたいのに……手も指も動かない。声も出せない……ごめんなさい)
命の灯火が消えかけているからか、それとも体の何を失ってもいいからあそこから出たいと願ったからか……何が原因か更紗にも分からないが瞼を上げたきり、自分の思うように何処も彼処も動かせない。
それは不便でもどかしいが、何より望んだ杏寿郎の姿を目にすることが叶い、冷たくなっている自分の体に大好きな春の日差しのような温かさが感じられ、嬉しくて幸せで涙が溢れてきた。
「更紗、君の望み……君の願いがもうじき叶う。ほら、鬼舞辻が消えていく。君が助けてくれた皆が鬼舞辻を倒してくれた……だから更紗も安心して戻っておいで……置いていかないでくれ」
(本当に……鬼舞辻が消えていく。よかった……皆さん生きて下さってる。杏寿郎君、笑って下さい。もう誰も……理不尽に命を脅かされなくなるんです。笑って……)
上手く出来るか分からなかったが、どうにかして杏寿郎に笑顔になって欲しい更紗は、なかなか言うことを聞いてくれない表情筋を動かし笑みを浮かべた。