第25章 決戦と喪失
更紗は1人、何も無い誰もいない暗闇に佇んでいた。
「あらま……もしかして私、生死の境を彷徨っているのでしょうか?戻りたいなぁ。まだ闘いも終わってないのに、こんなところで閉じこもってる場合じゃないです」
辺りを見回して出口はないかと探すが、真っ暗闇が続くだけで光の一筋も差し込みすらしていない。
「杏寿郎君……怪我してないでしょうか?皆さん無事でしょうか?約束守りたいのに……これじゃあ守れない。遺して行きたくない……悲しい想いなんてさせたくない……出口……探さないと。ここで立ち止まっていても何も好転しないんだから」
道らしい道どころか全てが黒く塗りつぶされており何も見えないのに、自分の体だけ発光しているかのように鮮明に見える。
それが一段と不気味で不安が徐々に膨らむ。
「誰か……杏寿郎君!名前を呼んで下さい……お願い。ここから連れ出して……まだ側にいたいの。私の体の何を失ってもいい……私をここから出して!」
『更紗』
声のした方を見上げると小さくも温かく燃えるような光が見えた。
「杏寿郎君……名前呼んでくれた」
小さな光は遥か遠くだが、手を伸ばせばまるで引き寄せられるように体が浮上していく感覚に見舞われた。