第25章 決戦と喪失
朝日が昇る直前、鬼舞辻が最後の足掻きで巨大な赤子となり表面積を増やして消滅するまでの時間を稼ぎ出した。
「お前に構ってる暇はない!早く消滅してくれ!更紗が……クソッ!」
杏寿郎がチラと更紗を確認すると、珠世と愈史郎が懸命に更紗を救おうと手を尽くしてくれていた。
だが見たところ更紗は意識がないようで目を閉じてぐったりとしており、命の灯火が消えかけていると分かる。
そばで名前を呼び励ましてやりたいのに、目の前の鬼舞辻がしぶとく生きようと足掻くのでそれすら叶わない状況だ。
「どれだけの者を悲しませれば気が済む……どれだけの命を奪い痛みを蔓延させれば気が済むんだ!あの子はこれから誰よりも幸せになるべき少女だ!お前なんぞに奪わせるものか!」
柱たちの前で涙など流したことはなかった。
導く者として強く在らねば……母親との約束を守るために、成すべき事を成すために鬼殺隊の柱である時は涙を流すまいと心に決めていたから……
それが1人の少女がいなくなるかもしれないと思うと、そんな強い想いも呆気なく崩れ去ってしまう。
視界が涙で歪んでいく。
「おい!いい加減あいつの側に行ってやれェ!攻撃手段を持ってねぇ塵屑野郎を足止めするくらい、こんだけ柱と継子が揃ってりゃあ十分だァ!頼むから死なせねぇでくれェ!」