第25章 決戦と喪失
「そうでしたか。でしたら、あそこの壁にもたれかけさせてあげて下さい。更紗さんも闘いの状況が気になるでしょうから」
珠世が指さした場所は鬼舞辻の攻撃を免れ原型を保っている建物の壁だった。
終戦まで意識を保っていることは難しいかもしれないが、そこからなら闘いの様子が確認できる。
それが今まで共に闘いここまで鬼舞辻を追い詰めてくれた更紗への珠世から出来る最大の労いだ。
そんな珠世の想いを汲み取り、圭太は辛うじて座り込んでいる更紗を抱えあげる。
「分かりました。月神、煉獄さんたちが懸命に闘ってくれてる。あと数分で夜も明けるから……一緒に見届けよう。月神が助けてくれた沢山の人たちが帰ってくるのを待とう」
まだ命を繋いでいる。
しかし医療の知識を持ち合わせていない圭太でも分かるくらいに更紗は激しく衰弱しており、驚くほど軽い体は力なく圭太の体に寄りかかっていた。
その姿がいつもの元気な姿とあまりに違い、壁にもたれかけさせてあげた時には我慢していた涙が頬を伝い地面へと落ちていく。
「圭太……さん。助けてくれて……ありがとう」
「俺は何もしてない……もう話さないでくれ。珠世さん、愈史郎さん……どうか月神を助けて……お願いします」
圭太が地面につくほど頭を下げたと同時に珠世と愈史郎は動き出し、多くの人から生きて欲しいと願われている少女の処置を開始した。