第25章 決戦と喪失
「珠世様。無事で良かったです……あのね、力を抑えようとしてるんだけど、なぜかいつもみたいに制御出来ないの。どうしましょう?」
「制御出来ないって……分かりました。そのままで構いません。ですがもう造血薬は使わないで下さい。私が何とかしますので任せていただけますか?」
更紗の足元には大量の注射器が転がっており、どれだけ無理をしていたか聞かなくても理解出来た。
早く処置を施さなければ……いや、施しても命が助かるか危ういところまで来てしまっている。
本人がそれを1番自覚しているので口には出さず、出来る限り平静を保って珠世は更紗に笑顔を向けた。
「はい……」
もう言葉を紡ぐ力さえ残っていない更紗の体を抱き寄せ場所を移動させようと珠世が力を入れると、抱えあげる前に肩をポンと叩かれる。
誰かと思って振り返ると、不機嫌な顔をした愈史郎と見知らぬ少年が涙をこらえた顔で立ち尽くしていた。
「俺が月神を運びます。俺、この子に3回も命助けられたんです。せめて少しでも力にならせてください」
涙を堪えた少年は棗が亡くなった任務から始まり、那田蜘蛛山、そしてこの戦場で更紗に命を繋げてもらった圭太だった。