第25章 決戦と喪失
鬼舞辻を足止めしようと杏寿郎が傷だらけの体を動かし始めて暫く経った頃、自分を含め共に闘う皆の体が炎のような美しい膜に覆われ、急速に傷が癒えていく様を目に映した。
そしてここより少し離れた場所で地面に手を付きながらも、皆から視線を逸らすまいとふらつく体で赫い瞳をこちらに向けている更紗の姿を見つける。
「更紗!やめてくれ!本当に死んでしまうぞ!」
叫び懇願するがニコリと微笑むだけでいっこうに力を抑える気配が感じ取れない。
鬼殺隊の柱として何を優先するべきか……そんな事は言われなくても十分理解している。
それを更紗も理解しているから、こうしてこの場の全員の傷を癒し闘う力を最大限に与えてくれているのだ。
「煉獄さん!更紗ちゃんを止めて!このままじゃ死んじゃうよ!私が煉獄さんの分も頑張るから…… 更紗ちゃんの側に行って!」
「それは出来ん!あの子は今俺が側に来ることを望んでいない!……竈門少年!俺が合図すれば横へ飛べ!」
更紗の望みは鬼舞辻を倒すこと。
自分に構って欲しくて全員の傷を無理にでも治しているわけではないのだ。
それが願いならば……と杏寿郎は自ら編み出した技の構えを取った。
「炎の呼吸 奥義 玖ノ型 煉獄!」