第25章 決戦と喪失
煉獄家では涼平が目を覚まし、震える紗那の体を支えていた。
「紗那…… 更紗はどうなってしまうんだ?何か知ってるかい?」
「分からないの……私はこんな使い方したことないもの。私の親もその親も知らない。村の中で血を使った治癒をすること自体、滅多にあることじゃないから……でも……死ぬか生きるか……生きていても体に障害が残るかもしれないわ」
血を失っては強制的に造らせる。
そんな異常な状態を体に強いれば自ずと体に多大な負荷がかかるのは目に見えて明らかである。
3人が紗那の言葉に絶望で覆われているところに、鎹鴉から珠世が更紗の元へ派遣される旨が伝えられ、まず千寿郎の顔色が僅かに明るくなった。
「紗那さん、涼平さん!珠世さんは優秀な研究者です!鬼舞辻を追い詰めている薬も開発された方です!きっと更紗さんを助けてくれます!絶対に助けてくれるので信じましょう!絶対に皆で元気に……帰ってきてくれます!」
兄や父、そして更紗までもが戦場へ赴いてしまい、心的負担が大きい千寿郎が涙を堪えて自分たちを励ましてくれる姿に、紗那も涼平も身が引き締まる思いがした。
涙を堪える千寿郎の体を抱き寄せ笑顔を向ける。
「そうね、信じて待ちましょう。絶対に帰ってきてくれるわ」
「あぁ……杏寿郎君が連れ帰ると言ってくれたしね。ありがとう、千寿郎君、励ましてくれて」
3人は身を寄せ合い更紗の無事を……全員の無事を心から祈った。