第25章 決戦と喪失
厳しいお言葉をいただいて当然な状況で、蜜璃の相変わらず愛に溢れた言葉に更紗の胸の中が温かさで満たされていく。
「ありがとうございます、蜜璃ちゃん。最後まで」
「夜明ケマデ後一〇分!後一〇分!」
鎹鴉の声が聞こえるのと2人が鬼舞辻へ走り出したのは同時だった。
ようやく終わりが見えてきた。
今まで理不尽に命を奪われ嘆き悲しむ人の姿を多く目にし、自分たちも辛い想いを数え切れないほど味わってきた。
全て鬼が原因。
その鬼の始祖たる鬼舞辻をここまでようやく追い詰められた。
日輪刀を構え足止めをしている皆に加わろうとした正にその時、更紗の全身が警笛を鳴らした……そこで立ち止まれと。
「蜜璃ちゃん!ダメ!」
前へ進んでいた蜜璃にほぼ体当たりに近いかたちで抱きかかえ、地面を強く踏み締めて跳躍し今来た道を戻っていく。
鬼舞辻に背を向けている更紗には何が起こったか分からなかったが、蜜璃が息をのみ小さく悲鳴をあげたので……鬼舞辻が仲間たちを痛めつけたのだと理解した。
それを裏付けるように血の匂いが2人の鼻を刺激する。
「蜜璃ちゃん……私は皆さんを助けます。どうか鬼舞辻の足止めを願えませんか?お願いします」