第25章 決戦と喪失
(栄養剤に余裕はあるけど、造血薬はさっきみたいな治癒を発動させるには後1回分くらいしかない……見極めないと)
手足が千切られたり腹に穴を空けられさえしなければ通常の治癒で十分まかなえる。
「千切られる前に繋げろ、穴をあけられる前に塞げ……常に周りに目を配り治癒を施せ……」
更紗らしからぬ言葉遣いは誰にも聞かれることなく頭の中で永遠と巡り続け、傷だらけになってしまっている皆を……ほぼ無意識に膜で覆った。
「力量が足りないなら治癒で力に……その時間を作れ……炎の呼吸 奥義 玖ノ型 煉獄!」
離れているからこそ放てる技。
杏寿郎が放てば間違いなく鬼舞辻をこの場に留める時間を大幅に稼げる技。
しかし杏寿郎にそんな時間を与えてくれるほど鬼舞辻は優しくない。
猗窩座と初めて闘った時に放ったので、鬼舞辻は当然高威力のこの技を杏寿郎が出せると知っているはず。
だが更紗が出せることは知らない。
鬼の前で使ったことはただの1度もなく、使用したのは天元や杏寿郎と試合をした時のみだからだ。
「なんだと……この虫けらがぁ!」
鬼舞辻の怒りは更紗に向けられ、柱たちに僅かだが時間が生まれた。