第25章 決戦と喪失
更紗とのやり取りを終え杏寿郎が戦闘に舞い戻って来たと同時に、実弥が赫刀で鬼舞辻の触手や体を切り付けながら跳躍して側へと着地した。
「あいつ無事なんだろぉなァ?!」
「無事だ!恐らくすぐに戻って来る!」
杏寿郎は全てお見通しだ。
それもそのはず、こちらへと戻ってくる際に見慣れぬ青年が更紗へと歩み寄っている姿を視界の端に映したからである。
直接会ったことはなかったが、更紗が研究の様子や共に研究を行う人物を事細かに研究へと赴く度に教えてくれていた。
その話の中で出てきた人物像そのままの姿だったから、あの青年が愈史郎なのだと判断出来のだ。
(戻って欲しくはないが……無理だろうな)
実弥が舌打ちしながら離れたのを期に、杏寿郎は頭の中を切り替えて鬼舞辻を足止めすることに専念する。
夜明けは近いはずなのにまだ太陽は昇らない。
体力はとうの昔に限界を超えている。
幾ら更紗が神に愛された娘であっても体力までは回復が出来ない。
だがそれで良かった。
きっとそんな力まで有していたならば、ここまで辿り着くまでに命を落としていただろうから。
「夜明ケマデ後四〇分!」
体力の減少に伴い傷が増えるが確実に時間は減っている。
「炎の呼吸 参ノ型 気炎万象」
とてつもなく長く感じる1秒を他の柱の技に繋げるために踏み込んで行った。