第25章 決戦と喪失
先ほどまで重かった体の感覚が幾分か和らぎ、杏寿郎の声に反応して周りに視線を巡らせると、生きて欲しいと願っていた全員の傷が癒えたようで、地面に横たわっていた体はしっかりと両足で支えられ起き上がっていた。
それを確認して、ようやく力を自身の中へとおさめる。
「何が起こったのか未だに分かりませんが……皆さんの傷が治ってよかった。戦闘音が続いています……そちらに向かって、私は大丈夫ですから」
体を起こせない更紗には誰が闘っているのか分からないが確実に誰かが鬼舞辻と戦闘を続けている。
一方杏寿郎には誰が闘っているのか理解しているので、目をギュッと1度瞑って更紗を抱え上げた。
「君を安全な場所に移動させる。少し揺れるが耐えてくれ」
徐々に体温の戻りつつある手で杏寿郎の胸元の隊服を握り締め振動に備えたが、景色が移ろい変わっただけで静かなものであった。
そして運ばれた先は戦闘が行われている場所から少し離れた隠が待機しているところで、待っていてくれたのか隠が腕を広げ更紗を杏寿郎から受け取った。
「隠の方、この子を頼む。君たちが見て危険だと思えば押さえ付けてでも止めてくれ」
「……後で必ず追い掛けます」
隠が頷くのを阻止するように更紗が言葉を発するもので、杏寿郎が眉根を寄せさせる。
もちろん隠はどうしたものかと2人を交互に見比べた。