第25章 決戦と喪失
更紗の体を起点として瞬く間に辺り一帯に赫い粒子が広がり、怪我人に反応して粒子が急速にそこへ凝縮されていく。
手足を失った者は徐々に手足を取り戻し、抉られたり穴が空いた腹も確実にゆっくりと塞がれていく。
そして血溜まりを作っていた者たちの傷は完全に癒えた。
それに反して杏寿郎の目の前にいる更紗の顔色は真っ青になり、意識が朦朧としだした。
「何てことを……くそ!」
皆の傷が完全に癒えるまで意識を飛ばすものかと歯を食いしばっている少女の鞄を漁り、造血薬を取り出して今まで更紗がしていたように首元に突き刺す。
「死ぬな!どうして君はいつもいつも無茶をするんだ!俺は死なないって言っただろ?!たまには自分の命を優先してくれ!」
次々と造血薬と栄養剤を打ち続けていたが、その手が止まった。
数刻前、本人が10本以上は体がもたないだろうと言っていたのを思い出したからだ。
既に9本もの造血薬を打ち終えてしまった。
顔色は先ほどまでより良くなってはいるが、あれだけの人数の深手を一度に治癒した反動は大きかったようで、全く血が足りていない状態である。
「もういい!治癒するのをやめてくれ!このままでは君の体が力と共に焼き切れてしまう!…… 更紗、頼む」