第23章 上弦と力
「俺がしくじったせいで悪かった。血……いっぱい流させて……」
頭を下げられるも、更紗からすれば反対に謝りたい心境である。
あれしか思い付かなかったとは言え、人間である玄弥に血を与えてしまったのだから。
「私は……謝っていただくことなんてしていません。申し訳ございません……不快な思いをさせてしまって」
「あ……いや、違う。謝って欲しいんじゃねぇんだ。不快も何も……あれで助けてもらったから、その……ありがとう。驚いたけど感謝してる」
たどたどしい2人の謝罪感謝合戦を暫く4人は眺めていたが、全く終わる気配がないので更紗を杏寿郎が、玄弥を実弥が引き取る形で終わりを迎えた。
「謝罪も感謝もどちらも受け取ってあげなさい。あまり食い下がってしまっては玄弥少年も困ってしまうぞ?」
「は、はい!では私は玄弥さんが生きていて下さっていることに、ただ喜んでおきます!」
ようやく笑顔となった更紗の頭を杏寿郎が撫でこちらは穏やかににこやかに収拾がついたようだが、どうもあちらはそうもいっていない様子である。
「お前なァ……いつまでも女相手に謝らせてんじゃねェ!助かった、ありがとうで終わらせろや!ぐじぐじ無駄な応酬繰り返すな」