第23章 上弦と力
玄弥が実弥に叱られてしまっている。
だがそれすら嬉しいのか、玄弥の顔は眉を下げ困りながらも口元に笑みをたたえていた。
戦場に似つかわしくない穏やかな空気が漂っていたが、突如としてそれは崩れ去る。
「珠世様ヲ助ケテクレ……愈史郎カラノ伝言デス!身構エテクダサイ!」
珠世や愈史郎の正体や鬼殺隊にいる理由は全員の知るところだが、珠世はともかく愈史郎がここに来ていることを知らなかった皆が驚いた。
そして助けるために身構えろと言う理由も分からないが、反射的に身構え戦闘態勢を整えるも……
『え?』
全員の呆気に取られた声が重なった。
それもそのはず……全くの無警戒だった足元の床が何の前触れもなく消え去ったのだから。
いくら柱であっても飛ぶ力など持ち合わせている訳もなく、全員が重力に逆らわず落下していく。
「全員日輪刀を抜け!この先に鬼舞辻が必ずいる!珠世と言う鬼を救出次第総攻撃にうつる」
行冥の指示に全員が鞘から日輪刀を抜き出し、器用に空中で体勢を整えながら更紗の周りを囲った。
「更紗は基本的に援護に徹してくれ。攻撃は君の……判断に任せるぞ。今度は死にそうになるような判断は下すな」
「かしこまりました!お任せ下さい!」
些か不安になる元気な返答に杏寿郎を始め皆が顔を顰めるも、ようやく姿を確認出来た鬼舞辻無惨へと視線と刃を向けた。