第23章 上弦と力
(10本以上1度に取り込めばどうなる……永遠と血を失い続けて永遠と血を造り続ける。そんな異常事態に体が着いていくはずがない。だが……必要だと更紗がみなせば敢行するだろう。どうしたものか)
命を落とすところまで無茶はしないはずだ。
それでも落とすぎりぎりまで血を使い続けることは、今の更紗の表情を見れば容易に想像出来てしまう。
「更紗、念の為聞いておくが、ご両親との約束は覚えているな?」
「もちろんです。私は死にませんし杏寿郎君も死なせません。そして、誰かのために命を賭けて闘う尊い方たちを、可能な限り守り助けます」
一応約束は忘れていないようだ。
それでも危うい位置にある更紗の思想が今の杏寿郎の懸念事項である。
「そうか……ならば俺は更紗の力の使用を最小限に抑えられるよう、後輩たちを守ることにする。共に励むぞ」
今は無理に更紗の感情を押さえ込んでしまうのは得策ではないと考えた結果、杏寿郎は杏寿郎の出来うることで更紗の被害を最小限に抑える道を選んだ。
今押さえ込めば更紗の命は助かるが、気持ちが死んでしまうとの結論に至ったが故の判断である。
「はい!私、まだ柱の方々に願いを叶えていただいていませんし。無事に帰って、私の願い……皆さんで叶えてくださいね」
「あぁ、必ず叶える!さぁ、あそこの部屋だ!君の願いを叶えるためにも必ず助けるぞ」
4人が鬼と戦闘を繰り広げている部屋は目前……そしてそこに入って2人の目に飛び込んできたのは、お館様の言っていた凄惨な光景だった。