第23章 上弦と力
「なんだと?どう言う……意味だ?!」
聞いたところでまともな答えなど返ってくるはずもない。
それでも聞き捨てならなかった理由、それは通路に打ち捨てられていた夥しい数の女性の亡骸だ。
杏寿郎は鋭い扇ごとその体を弾き飛ばし、距離をとりながらも警戒を緩めず、笑みを浮かべ続けている鬼を睨み付ける。
「それはもちろん、女の子を食べたいからだよ?女の子は子供を生む為に沢山の栄養が体内に詰まってるんだ!しかも更紗ちゃんは特別な力があるでしょ?さぞかし美味しいんだろうね!」
(その欲を満たすためだけにあれだけの女性を食い散らかしたのか。何と身勝手で醜い……)
「虫唾が走る!炎の呼吸 伍ノ型 炎虎!」
振り下ろされた刃から激しく燃え上がる炎の虎が出現し、鬼を食い破らんと日輪刀と共に猛然と襲いかかっていく。
しかし鬼もそれを甘んじて受けるわけもなく……
「血鬼術 散り蓮華」
二対の扇から無数の氷の花びらのようなものが放たれ、炎虎とぶつかり合って相殺された。
それを見ていたのか見ていなかったのか、背後からよく通る高めの声が響き、杏寿郎の鼓膜を刺激する。
「杏寿郎君!その鬼は肺の細胞を壊死させる血鬼術を使います!くれぐれもお気をつけ下さい!」