第22章 開戦と分断
流石トンデモ母を日々扱っている涼平、トンデモ少女の行動を完全に読み切っている。
「そうですよ!それに更紗さんはあの後に始まった柱による稽古で、誰よりも厳しい課題を誰よりも早く突破して柱になられたんです!兄上は更紗さんの側を離れないと言っていましたし、鬼なんて……蹴散らしているはずです!」
2人を元気付けようと千寿郎は声を張り上げるが、千寿郎とて自分の父や兄、そして姉のように慕っている更紗が戦場へと赴いてしまったのだ……不安で心細くて涙が目を覆ってしまうのは仕方がないだろう。
「必ず帰ってこられます!お2人は絶対に約束を違えません!……信じて待ちましょう!あ!本部の鎹鴉です、少しお待ち下さい」
待ち望んでいた鎹鴉が到着し、3人の視線は一斉にそちらへ向けられる。
そして千寿郎が抱きかかえて2人の前へ腰を下ろすと、妙な紙を額に貼り付けている鎹鴉は今の戦況を語り出した。
「上弦ノ鬼ト会敵シタ剣士ハ未ダ現レズ。炎柱様、紫炎柱様ハ行動ヲ共ニシテオリ、城内ニ蔓延ル大量ノ鬼ヲ確実ニ殲滅シテオリマス。怪我ノ一ツモ負ッテイマセン」
どのように情報を仕入れているのか3人には分からないが、更紗と杏寿郎の無事を知れたことにより、部屋に流れていた悲痛な空気が僅かに解れた。
「千寿郎君、大人の私が情けない姿を晒してごめんなさい。しっかりしなきゃね!あの子たちが頑張ってるんだもの!」
気を持ち直した紗那の言葉に、部屋の空気は更に解れていった。