第22章 開戦と分断
「は、早く開けて!更紗ちゃん、何書いてるの?」
急かす紗那を咎めることなく、涼平は言われるまま震える手で封筒を開けて中の手紙を取りだし読み上げた。
『お父さん、お母さんへ
私、お館様や柱の皆さんに認めていただき柱となりました。
紫炎柱なのに日輪刀は2色に染まったの。赫と薄紫。
今から杏寿郎君の色と私の色に染まった日輪刀で鬼を倒してきます。
きちんと直接伝えられなくてごめんなさい。
約束通りちゃんと生きて帰るから、待っていてください。
どこに居ても何をしていても2人を想っています。
行ってきます。
更紗』
読み終わったと同時に、紗那が卓袱台に突っ伏して泣き出してしまった。
ほんの数ヶ月前まで目の前で笑っていた娘が戦場へ突然赴いてしまったのだ、母親である紗那の心痛は計り知れない。
「私も行きたい……あの子を守ってあげたい。涼平さん、千寿郎君……更紗ちゃんが帰ってこなかったらどうしよう。杏寿郎君と一緒に帰ってこなかったら……どうしたらいいの」
くぐもった紗那の声は静かな居間に悲しく響き、涼平や千寿郎の胸に鋭い痛みをもたらした。
「紗那……今は信じるしかないよ。あの子のことだ、きっと今頃、杏寿郎君を驚かせるくらい強い技で鬼を倒してるはずだ」