第22章 開戦と分断
その頃、杏寿郎の生家には2人の人物が駆け付けていた。
「ごめんください!千寿郎君、いらっしゃいますか?!」
鍵を閉めていた玄関から切羽詰まった男の声が響き、千寿郎は慌てて仏間から玄関へと足を運び外の人物を屋敷内へ招き入れた。
「お待ちしておりました。涼平さん、紗那さん。詳しくは居間でお話しします」
生家を訪ねてきたのは更紗の両親だった。
本部の鎹鴉から、戦が始まり柱となった更紗は先陣を切ってそこへ赴いたと連絡が入ったのだ。
そして生家に千寿郎が待機していると聞き、着の身着のままで家を飛び出してここまで足を運び今に至る。
涼平と紗那は今すぐにでも自分の娘の状況を聞きたい心境だが、ここで待機するのにも限界があると言い聞かせ、千寿郎の案内の元、居間へと足早に移動して卓袱台の前に腰を下ろした。
「戦況はまだこちらに届いていませんが、本部の準備が整い次第ここにも知らせてくれる手筈になっています。それまでにこちらを読んでください。更紗さんから預かった、お2人宛の手紙です」
千寿郎が差し出してきた封筒には、丁寧な文字で
『お父さん、お母さんへ』
と書かれている。