第22章 開戦と分断
「ふぅ……終わりました。杏寿郎君、お怪我は……ございません、か?」
後ろに控えてくれている杏寿郎へ笑顔で問い掛けるが、杏寿郎は日輪刀を構えた格好のままで、冷や汗を流しながら呆然と更紗を見つめ返していた。
「あ、あぁ!怪我も何も鬼が一体たりともこちらに流れてこなかったので驚いていたのだ!凄まじいな!治癒の力だけでなく、技もここまで磨き上げているとは思いもしなんだ!紫炎柱、期待してるぞ!」
言われ慣れていない呼び名で呼ばれ、更紗はむず痒そうに体を捩らせた後に杏寿郎の側へと歩み寄った。
「これは柱稽古で皆さんが厳しく育ててくださった成果です。あの……杏寿郎君、私ね、珠世様も心配なのですが、しのぶさんも心配です。今だからこそ言っても問題ないと思うので打ち明けますが……しのぶさん、ご自身の身を呈して上弦の鬼を討とうとしているようでして」
「……それでか。胡蝶から、カナヲが夜ずっとついて回ってくるのですが、何か変なことを吹き込みましたか?と俺に鎹鴉伝てに聞いてきたのだ。栗花落少女から相談を受けた君が助言した結果だったわけか……分かった。今は何処にいるか分からんが、分かり次第合流を試みよう」