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月夜の軌跡【鬼滅の刃】

第22章 開戦と分断


杏寿郎を見上げてくる顔には傷がないものの、吹き上がっていた炎に晒された影響で煤が付着しており、自分より小さな体でどれほどの衝撃を受けたのかを物語っている。
せめてその汚れだけでもと、杏寿郎は隊服の袖で顔の煤を拭い取ってやった。

「よく守ってくれた。本当はもっと休ませてやりたいのだが……」

「いえ!私は私の望んだことをさせていただいたので、休みたいなんて言っちゃったらバチが当ります。お館様の具合が心配なので……それだけが心残りです」

あまね様や子供たちは体を起こしているが、お館様はやはり起き上がる力さえ残っていないのだろう……浅く呼吸を繰り返し、視線だけを更紗と杏寿郎に向けていた。

「煉獄様、月神様。この計画を立てた時から死ぬ覚悟をしておりましたので……こうして言葉を紡げることに驚いております。お館様のことは私や宇髄様にお任せ下さい。どうか……鬼舞辻無惨を……」

まるでお館様の言葉を代弁するかのようにあまね様が言葉を紡ぎ、子供たち共々座ったままの姿勢で頭を深く下げた。

「頭をおあげ下さい。俺はこの子の力に便乗したまでですので。また戻りましたら……ゆっくり更紗と話してやってください。では、俺たちは向かいます。行くぞ、更紗」

「は、はい!皆さん、お身体大事にしてくださいませ!天元君、行ってきます!」

戦場に向かうとは思えない笑顔を残して、更紗は先を走る杏寿郎の後を追っていった。

「おう!待ってるぞ!絶対帰ってこい!」

塀の中へ入っていったので聞こえたのかは不明だが、微かに元気な返事が天元の耳に聞こえたような気がした。
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