第22章 開戦と分断
塀を乗り越えた先には天元が待機してくれていた。
「よく戻った!お館様たちは姫さんの治療薬で対処する!姫さんは煉獄と自分の回復を優先させろ!」
呆然とする4人をそれぞれ地面に寝かせてやり、誰を優先させるのか考える余裕のない更紗は、纏めてその場の全員に全力で治癒を施した。
だが杏寿郎も更紗も爆発によって飛ばされてきた瓦礫や、爆発物に仕込まれていた撒菱のような物が複数体に突き刺さっており、痛みは完全になくならない。
「杏寿郎君!可能な限り破片を抜き取って!早く!」
「分かった!」
自分の体に突き刺さった破片を抜いては放り投げながら継続的に治癒を施し、焼け爛れた隊服を一応全員に背を向けて脱ぎ去って新しい隊服に袖を通して脱いでおいた羽織も装着する。
そうして杏寿郎へ視線を戻すと粗方破片を取り除き終えたのか、更紗と同じように先ほど裁縫係から受け取っておいた新しい隊服に身を包み、羽織も肩に掛け終わっていた。
「待たせた。更紗も準備は整っているな?」
「もちろんです。いつでも出られます」
最後の仕上げに杏寿郎と自分の傷を完全に癒し、日輪刀を腰に携えて杏寿郎の瞳を見つめる。