第22章 開戦と分断
3人が産屋敷邸に到着すると同時に太陽は完全に姿を隠した。
暗がりの中、塀伝いに天元の耳を頼ってお館様がいる部屋の前まで移動するが、杏寿郎の懸念通りお館様以外にも部屋や庭にはあまね様や子供たち2人が共に寄り添っているらしい。
話し合った結果、より確実性を高めるために杏寿郎が部屋内にいるお館様とあまね様を、更紗が庭で佇む子供たち2人を救出することに決まった。
「いいか、お前ら。お館様が起爆の何かしらを持ってる。それを押す寸前で合図を出す。分かってると思うが、ここからだと聞き逃してもおかしくねぇほどの音だ。俺が派手に合図出すまで静かに……」
天元の言葉が途切れると共に、3人の全身を悪寒が襲う。
杏寿郎や天元にとっては初めての悪寒を伴う気配だが、更紗にとってここまではっきりと感じた悪寒は2度目となる。
ついに鬼舞辻無惨がお館様の前に姿を現したのだ。
塀や庭を挟んだ場所からでは話している内容は聞こえず、天元の表情を伺っても内容を読み取ることは不可能だった。
(もうすぐ……今回も失敗は絶対に許されない。治癒を掛けるのは杏寿郎君にお館様夫妻、お子様方そして私。目に見える範囲が確実に治癒を掛け続けられるなら、私の体で優先するのは目……ですね)