第22章 開戦と分断
天元の優しい言葉に更紗は頭を上げ、これから起こす事に似つかわしくないふわりとした笑顔を向けた。
「生きて帰ると両親に約束しましたから。それに杏寿郎君や天元君を巻き込むんです、失敗なんてもう頭の中には存在していません。これを見ていただければ、お2人にも安心していただけると思います」
何を……と2人が問いかけようとした瞬間、自分たちの周りや少し離れた場所で待機している神久夜や要、そして道を偶然通りかかった猫の周りに、見慣れた銀色の粒子がそれぞれを包み込んだ。
「柱稽古で皆さんにご協力していただき、効果範囲を複数……止まっている動いているに関係なく、指定出来るようになりました。ね?失敗なんて考えられないでしょ?私が責任を持って皆さんの治癒を任されます」
天元はもちろんだが、ここまで更紗が成長していたと知らなかった杏寿郎も、自分の体を動かす度にそれに反応してついて回ってくる粒子を見て息を呑んだ。
「これは凄いな」
「いやいやいや!凄いなんてもんじゃねぇだろ!ほら、動き回っても着いてくんぞ!」
静かに片腕を空に翳す杏寿郎やその辺を動き回る天元の姿に、更紗は笑みを浮かべて嬉しそうに両手をポンと叩き合わせた。