第22章 開戦と分断
その強い眼差しに今度は更紗が動揺をあらわにした。
杏寿郎と違い溜息は零さなかったが、思わず息をすることを忘れるほどの衝撃が更紗の精神を襲う。
「それは!万が一、無事では済まなかった時に鬼殺隊にとって大きな損失になります!納得しかねます!」
「君の今の気持ちが俺の感じているのと同じものだ。それに救助対象がお館様お1人でなかった場合はどうする?更紗1人で全員抱えきれるのか?」
今まで数え切れないほど更紗は杏寿郎から叱責されてきたが、今の静かな叱責は更紗の胸に深く刻まれ、不思議と今までよりも痛みを伴った。
それでも更紗からすれば、杏寿郎が自分の計画に乗じることは受け入れられないようで、思わず食い下がる道を選んでしまった。
「私は痣者です。例えお館様のお傍にあまね様やお子様方がいらっしゃったとしても抱えます!誰も傷付いて欲しくないんです……どうか杏寿郎君は」
「おい!決戦前に何揉めてんだ?てかお前らが揉めんの初めてじゃね?気ぃ立ってんのは分かるが、とりあえず2人とも落ち着け。まだ日暮れまでには多少時間がある。聞いてやっから、な?」
そしていつも通り、時を見計らったかのように天元が2人の前に姿を現した。