第22章 開戦と分断
相変わらずとんでもない事を言ってのける更紗に溜息を零し、杏寿郎は動かしていた足を止めてその腕を掴んで自分の近くに引き寄せた。
「これを見越して替えの隊服を取り寄せていたのか?」
「え?!そんな事までご存知だったなんて……あ、いえ、流石にこの事態を想定してはいませんでした。刀鍛冶の里での闘いで痛い思いをしたので用意したに過ぎません。こんな所で役に立つとは思ってもみませんでした」
既に自分の計画を遂行する気満々だが、そもそもの問題を更紗や杏寿郎では解決出来ないので、現時点では遂行不可能な計画なのだが……
「どうあっても敢行するつもりか?」
「もちろんです。お館様を救うために私はここへ赴いたので。救わなければここに来た意味がなくなってしまいます」
今となっては幾度となく目にしてきた更紗の強い意志の灯った赫い瞳。
これを覆すなど杏寿郎の存在を持っても不可能だ。
「分かった。だが更紗1人で行かせるわけには行かない。俺も共に向かうことが、その計画を遂行させる条件だ」
そしてこちらも更紗に負けない……それを上回る強い意志を灯した瞳で見返した。