第22章 開戦と分断
杏寿郎は自室へ入るや否や、要に2つの仕事を遣わせた。
1つは生家へと赴き槇寿郎へお館様の護衛を務めて貰うよう言伝ること。
そしてもう1つは柱へ、戦闘態勢を整えて本部へ集合するように呼びかけること。
それらを任せると、更紗や神久夜に勘づかれる前に要を空へと放ち、纏めておいた準備物を全て腕に抱え風呂場へと急いだ。
「脱衣場で着替えるのは……危険か。万が一更紗が確認しに来た時に言い訳が出来ん。それにしても……お館様は何をされようとしておられるのか」
こればかりは更紗の後を追い、話を聞かなければ流石に杏寿郎も分からない。
ただ命の危機があると漠然と感じ取れるだけだ。
杏寿郎は身に付けていたもの全てを脱ぎ捨て、浴場内へと足を踏み入れたと同時に着々と準備を整えていく。
するとやはり脱衣場の戸が開く音が僅かに聞こえ……再び静かに閉められた。
「用心深いことだ。その用心深さを違うところで発揮して欲しいものだが……」
完全に更紗の気配が風呂場から離れたことを確認すると、万全の準備を整え終えた姿で脱衣場へ移動し、耳を澄ませて玄関先へと意識を向ける。
玄関の戸を用心深く開く音、少し間を空けて閉まる音が聞こえた。
「名残惜しそうにここを発つならば、理由を話していけばいいものを」
悲しげに家の中を振り返ったであろう更紗を脳裏に思い浮かべ眉を寄せると、杏寿郎は離れへと即座に移動して継子たちに準備を促した。
「本部に今夜鬼が出ると思われる!俺と更紗は先に行くので、君たちも準備を整え次第後から着いて来い!」
突然の事に3人は驚いていたが、弾かれたように準備を整え始めた。