第21章 秘密と葛藤
しのぶとの手合わせは元々なかったのだが、研究が予定より早く終わりそうだと数日前に本人から鎹鴉を通じて柱全員に報告が入ったので、それならば日替わりで手合わせを行おうと相成ったのだ。
まさか手合わせだけでなく他の要件も携えることになるなど、その時の杏寿郎は考えてもみなかったが……ちょうどいいと言えばちょうどいい。
「どうする?もちろんここでゆっくりしていても構わない」
「一緒に行きたい……です。一緒にいられる間は離れたくありません」
無条件に杏寿郎に甘やかせてもらい、ずっと引っ付いていても怒らず理由も聞かないで抱きしめ続けてくれていたからか、ようやく長い拗らせがおさまってきた。
「そうか、では共に朝から蝶屋敷へ行こう。少し……落ち着いてきたか?」
髪を撫でていた手を更紗の頬へと移動させゆっくり滑らせると、悲しみに沈んでいた表情に僅かだが笑顔が戻った。
「はい。杏寿郎君の胸の中は心地好くて……気持ちが穏やかになってきました。たくさんワガママいって申し訳ございませんでした」
「いや、穏やかになったならばそれでいい。こうして君が甘えるのは俺だけだと思うと、不謹慎かもしれんが少し嬉しくもあったからな。さぁ、明日の朝は早いぞ!そろそろ部屋で体を休めよう」
1度きゅっと更紗を抱き締め直すと、笑顔で頷く更紗を伴って自分たちの寝室へと向かっていった。