第21章 秘密と葛藤
翌朝、まだ完璧に安定したわけではないが、随分と落ち着きを取り戻した更紗を連れ、杏寿郎は蝶屋敷へと足を運んだ。
「ようこそ、煉獄さん。あら?更紗ちゃんも一緒なのですね。あの、煉獄さん」
長い期間共に研究を同じ部屋で行っていたからか、しのぶは更紗の様子がいつもと違うことに気が付き杏寿郎へわけをきこうとしたが、意味ありげに僅かに細められた目を見て口を噤んだ。
「…… 更紗ちゃん、私と煉獄さんは今から手合わせを行いますので、見学に来ても構いませんが……カナヲと少しお話ししてあげてもらえると助かります。色々あって、少し落ち込んでいますので」
ここで話せないのなら杏寿郎と2人で話せる時間を作る他ない。
それに……カナヲと話して欲しいと思ったのはしのぶの本音でもあるので、更紗が杏寿郎と共に来たのは助け舟だったのだ。
「落ち込んで?私でお力になれるのであれば、喜んでカナヲさんと一緒にいさせていただきます!カナヲさんはどちらにいらっしゃいますか?」
「ありがとうございます。カナヲは恐らく庭の何処かにいると思うのですが……探してきますので」
踵を返そうとするしのぶの手を更紗は慌てて掴み、笑顔で首を左右に振った。