第1章 月夜
外に出ると同時に煉獄の肩に真っ黒な鴉が1羽バサリと降り立ってきた。
更紗は驚き、息を飲んで思わず煉獄の繋いでいる手をギュッと握ってしまう。
「か、カラス??」
「ウム!ヨロシクナ!ショウジョヨ!!」
「えっと、こちらこそ、よろしくお願い……します?」
(鴉が話した。しかも煉獄様とそっくり……)
そんな事を考えていると、ブフッと更紗の隣り、すなわち煉獄から吹き出す音がした。
なぜ笑われたのか分からず、キョトンとした表情で煉獄を見つめる。
「すまん!フフッ、鴉に驚き鴉の言葉に言葉を返すとは!よもや!」
「あっ、鴉の話し方が煉獄様にそっくりで思わず……その……」
地面へと視線を落とし、恥ずかしそうに小さくなった。
銀色の髪から僅かに覗く耳まで真っ赤である。
「ふむ!少しでも気分が良くなったのならば良い事だ!して、君の名前はなんと言うのだ?名前が分からんと呼びにくくてな!」
更紗はハッとして、もう一度煉獄に顔を向ける。
「助けていただいたのに失礼しました!私は月神更紗と申します。この度は助けていただき」
「硬い!月神少女、俺は俺の責務を全うしただけだ!謝罪や感謝は必要ない!」
煉獄の顔は確かに更紗に向けられているが、なぜか目線は明後日の方向を向いている。