第20章 柱稽古とお館様
「しのぶさん……怒っていらっしゃいますか?」
「いいえ、例え更紗ちゃんが計らずしも自分の命を蔑ろにしていたからと言って怒ってなんかいないですよ。全く怒っていません」
明らかに怒っている。
早口で捲し立てる様は本気で叱られるよりよっぽど堪える。
「……すみません。決して軽んじていたわけではないんです。出来る限り毎日こっそり外に出してるのですが、なかなか減らなくて……言えば杏寿郎君にご心配をかけてしまいますし」
シュンと項垂れる更紗に杏寿郎は悲しげに眉を下げ、下がってしまっている更紗の顔を上げさせた。
「もちろん心配はするが、何も言われず手遅れになる方が俺はよほど怖い。頼むから心配くらいさせてくれ。で、胡蝶。怪我人がいないとなると胡蝶の研究が頼みの綱となるのだが、今から有効活用出来そうか?」
ニコニコと微笑み続けていたしのぶの笑みが深まり、嬉しそうに胸の前でパチンと手を叩き合わせた。
「それはもう有難いお話しです。更紗ちゃん、厳しい物言いをしてごめんなさい。でも煉獄さんの言う通りですよ?手遅れになったら取り返しがつかないのですから。少し待っていてください、容器を持ってきますので」