第20章 柱稽古とお館様
「私もまさか自分が柱になるとは夢にも思っていませんでした。沢山ありがとうございます」
笑いの場から和やかな場へと変化したところで、お館様が微笑みながらコテンと首を横に倒した。
「仲が良くていいね。さて、更紗。日輪刀を抜いてみてくれるかい?色を教えておくれ」
更紗を含め、その場の全員の視線が自然と更紗の右側に置かれた日輪刀へと縫い止められた。
皆の視線を一心に受けながら僅かに震える手で日輪刀を掴み、左手に持ち替えて右手で柄を握る。
色が赫く染まればどうなるのか……今まで赫く染まっていたのに色が変化することがあるのかなど考え事は止まないが、抜いてみないことには何も進まない。
「かしこまりました……いざ!」
よく分からない気合いを込たものの言葉尻とは正反対に日輪刀を抜く速度はかなりゆっくりで、何人かは肩透かしをくらってガクリと肩を落とした。
「言葉と行動が伴ってねぇじゃねぇかァ……どんだけ恐る恐るなんだよ」
実弥の苦言に苦笑いを零し、それでもゆっくり慎重に日輪刀を鞘から引き抜いていく。
まず第1に更紗の目に映ったのは『悪鬼滅殺』の文字。
(本当に彫られていました。今度鉄穴森様にお礼しなくちゃ……鈴村さんは今日ここにいるのかな?)