第20章 柱稽古とお館様
「お館様、戻りました」
「ありがとう。さ、お入り」
お館様の許可の元、開かれた入口から部屋へ更紗が足を踏み入れると、杏寿郎は苦笑いをうかべ他の全員は向こうを向いて肩を震わせた。
「な、何か変なところがありますか?1度確認したのですが……」
呆然と立ち尽くす更紗に分かるよう、杏寿郎は自分の額を人差し指でトントンと叩いた。
「更紗、急がなくていいと言っていただいたのに急いだだろう?転んで額にコブが出来ているぞ」
転んだ当初は覚えていたのだ。
だがあまね様と話したり着替えている間にすっかり頭からコブの事が抜け落ち、そのままこの部屋へと入ってしまった。
「……申し訳ございません。すぐ治します……」
更紗は立ったまますぐさまコブを治し、おずおずと杏寿郎の隣りにちょこんと気まずそうに腰を落ち着けた。
その頃には全員の笑いはおさまり、新たな隊服に身を包んだ更紗に視線を集中させる。
「言葉通り身一つで外の世界に出た更紗が柱の隊服を着ている姿を見ると、感慨深いものがあるな。よく似合っている」
最大の褒め言葉を杏寿郎からもらった更紗は頬を赤らめたままニコリと微笑んだ。