第20章 柱稽古とお館様
「いえ、お館様も少し柱の方々とお話しをしたいでしょう。私はここでお待ちしております。では後ほど」
パタンと襖を閉められた更紗は慌てて隊服の釦を外しにかかった。
廊下であまね様を待たせているのに、ゆっくりのんびりしている時間はないからだ。
「この隊服も今日で最後と思うと感慨深いものがありますね……今日からはこっちの隊服。金色の釦」
思わず杏寿郎と同じ色の釦をジッと眺めてしまうが、すぐに我に返って袖に腕を通した。
相変わらず大きさは更紗の体にピッタリで違和感がない。
裁縫係の鈴村の手腕に舌を巻きながら、次に手にしたのは一見今の物と変わらないように見える日輪刀。
今はまだ抜けないが、刃には柱のみが彫ることを許可された
『悪鬼滅殺』
の文字が刻まれているのだろう。
「早く行かなきゃ」
更紗は左腰に新たな日輪刀を差し、もう一度変なところがないかを確認してから襖に手を掛けた。
「今日から柱……しっかりしなくちゃ」
金色の釦と新たな日輪刀を視界に入れた更紗は気持ちを引きしめ直し、あまね様が待つ廊下へと続く襖を開いた。
……コブを治すことを忘れたまま。